オムロンや資生堂でもリストラ?でもあなたが解雇されない理由

仕事
この記事は約8分で読めます。

こんにちは、Akitoです。
最近こんなニュースを目にしました。

オムロンに資生堂でも…黒字経営でも若手社員も解雇される「令和版リストラ」の真実

大企業ですらリストラが進んでいると聞くと、自分もリストラされちゃんじゃないかって不安になりますよね。

でもこういう記事に惑わされなくて大丈夫です。
実は、あなたがリストラされる可能性は非常に低いんです。今日はその理由をわかりやすく説明します。

解雇の種類

解雇とは、会社が従業員との雇用契約を一方的に終了させることを意味します。
この解雇には、大きく分けて3つの種類があります。


1. 普通解雇

普通解雇とは、従業員の能力不足や協調性の欠如、健康上の問題、就業規則違反などを理由に行われる解雇です。

例:

  • 勤務成績が悪く、指導しても改善が見られない
  • 病気により復職が困難である
  • 業務に支障をきたすような協調性の欠如 など

2. 懲戒解雇

懲戒解雇とは、従業員による重大な職場規律違反や企業秩序違反に対して科される、最も重い懲戒処分としての解雇です。

例:

  • 横領
  • 贈賄
  • 重要な業務命令の拒否
  • 無断欠勤の継続
  • 重大なハラスメント
  • 経歴詐称 など

3. 整理解雇

整理解雇とは、会社の経営悪化や事業の再編に伴い、人員削減を目的として行われる解雇のことを指します。

本来、「リストラ(restructuring)」は組織再構成や財務・人事構造の改革など、経営効率の改善を意味する言葉です。
しかし現在では、この整理解雇の意味で「リストラ」が使われることが一般的となっています。


解雇は非常に難しい

普通解雇の要件である「能力不足」や「健康上の理由」といった言葉を見ると、
「自分は仕事であまり有能とは言えないから解雇されてしまうのではないか」
「体が弱く、休みが多いけれど大丈夫かな」
と心配になる方もいるかもしれません。
また、「会社が組織改革を決めたら整理解雇(リストラ)されるのでは」と思う方もいるでしょう。

しかし、安心して大丈夫です。実は企業にとって、従業員を解雇することは法的に非常に難しい行為なのです。

たとえば普通解雇の場合、「能力不足」「協調性の欠如」「健康上の理由」「就業規則違反」などが理由として挙げられますが、これらはいずれも厳格な条件のもとでしか認められません


能力不足による解雇について

ここで言う「能力不足」とは、単に他の社員より能力が劣る、ミスが多いというだけでは解雇の理由にはなりません。
業務遂行に明らかな支障があり、会社が求める業務水準を満たしていない場合で、かつ、会社が改善のために具体的な指導を行い、一定期間の猶予を与えても改善が見られなかった場合に限り、解雇が認められる可能性があります。

つまり、会社側があなたのために簡単な作業の部署への異動や指導など、あらゆる方法で改善を試みたにもかかわらず、

  • ミスを繰り返し、顧客からの苦情が相次ぐ
  • ノルマ未達が長期間続く
  • 指導や助言、配置転換したにもかかわらずこれらの改善が見られない

といった状況で初めて、解雇が検討されるのです。
会社ができる限りの手を尽くしてもなお、全然仕事ができない程度の能力不足でなければなりません。


協調性の欠如について

「協調性の欠如」も同様で、注意や指導を繰り返しても改善が見込めず、職場の秩序や業務運営に重大な支障をきたす場合に限られます。

  • 他の人にきつい言葉を言い続け、やめるように言われても直さず、何人かが辞めてしまった
  • 上司の指示を無視して、反抗的な態度をとり続けている
  • 顧客と何度もトラブルを起こし、会社の信用問題になった
  • 相談もせず勝手に仕事を進めて、大きなミスや仕事の遅れを出した

このような、いわゆる「モンスター社員」のように、継続的かつ重大な問題行動があるケースが該当します。
そして、これもまた、注意や指導、配置転換などできる限り会社が手を尽くしたが、どうにもならないような人の場合に解雇できます。
一時的なトラブルや人間関係の不和だけでは、解雇の正当な理由にはなりません。


健康上の理由について

健康上の理由で解雇される場合も、長期療養後も復職が困難であり、会社が簡単な業務などへの配置転換といった配慮をしてもなお、就労が難しいと判断されたときに限られます。

つまり、

  • 休職後に復帰しても仕事ができない状態が続いている
  • 病気のため、軽い仕事に変えても働けないほど体調が悪い
  • 入院や通院が繰り返され、会社の業務に大きな影響が出ている

このように、会社ができる限りの配慮をしてもなお働けないほどの健康状態でなければ、「健康上の理由」による解雇は認められないのです。


整理解雇(リストラ)はさらに難しい

整理解雇(いわゆるリストラ)については、以下の「整理解雇の4要件」をすべて満たさなければ、解雇は無効とされます。


1. 人員削減の必要性

経営悪化などにより人員削減が本当に必要であること。
売上や資金繰りなどの客観的なデータをもとに、合理的な必要性が説明できることが求められます。

しかも、ここで言う「経営悪化」とは、単なる赤字や一時的な業績不振では足りません。
整理解雇を行わなければ会社の存続自体が危ぶまれるレベルの深刻な経営危機であり、それを客観的に証明できなければなりません。


2. 解雇回避努力義務の履行

会社はまず希望退職者の募集や配置転換、ボーナス・賃金のカットなど、解雇を避けるために可能な限りの努力をしなければなりません。
こうした努力をせずに整理解雇(リストラ)を行うことはできません。


3. 解雇対象者の選定基準の合理性

誰を解雇するかについての基準は、客観的かつ公正である必要があります
恣意的な判断や差別的な選定は許されません。
基本的には、能力や勤務態度などに基づく合理的な基準が必要です。


4. 解雇手続の妥当性

労働組合や従業員に対し、十分な説明や協議が行われていることが求められます。
手続きの不備があれば、解雇は無効とされる可能性があります。

つまり、整理解雇とは「いきなり明日から来なくていい」と言えるようなものではなく、会社側がその理由や状況を丁寧に説明し、関係者ときちんと話し合うことが必要不可欠なのです。

さらに前提として、会社が赤字続きで経営が相当厳しい状態にあり、給料カットや人員配置の見直しなど、できる限りの努力をしたにもかかわらず、それでも解雇しないと会社が倒産するような状況でなければなりません。

こうした深刻な経営状態と、誠実な手続きがそろって初めて、「整理解雇が法的に認められる可能性」が出てくるのです。


懲戒解雇は最も重い処分

最後に懲戒解雇ですが、これは従業員が重大な職場規律違反や企業秩序の侵害を犯した場合にのみ適用される、最も重い解雇処分です。

たとえば、

  • 横領や着服
  • 暴力行為
  • 悪質なハラスメント

といった、社会通念上も著しく不適切な行為が該当します。

通常の倫理観や常識を持って勤務している限り、懲戒解雇になることはまずありません。


非正規雇用でも心配しすぎなくて大丈夫

「これって正社員の話でしょ?非正規雇用はもっと簡単に切られるんじゃないの?」
そう思って不安になった方もいるかもしれません。

たしかに、派遣社員の場合は、派遣先の都合で契約満了により終了となるケースもあります。
これは、派遣社員が雇用契約を結んでいるのは派遣元の会社であり、派遣先とは直接の雇用関係がないためです。
こうした派遣制度の構造自体が、日本の雇用システムの一つの「闇」とも言えるかもしれません。

しかし、あなたが派遣社員ではなく、パートや契約社員といった直接雇用の立場であれば、過度に心配しすぎる必要はありません。

たしかに、有期労働契約(期間の定めがある契約)は、契約期間の終了時に会社側が更新しない(いわゆる「雇止め」)ことも可能です。
ですが、この「雇止め」には『雇止め法理』というルールが適用されるのです。


雇止め法理が適用される条件

労働契約法第19条により、以下のいずれかに該当する場合、企業による雇止めには厳しい制限がかかります。

  • 契約の更新が繰り返されている場合
  • 労働者が契約更新を合理的に期待していた場合

つまり、あなたの契約が何度も更新されていたり、会社側が更新を示唆していたような場合には、企業が一方的に契約を打ち切るのは非常に難しいということです。

このようなケースでは、雇止めは「解雇」と同じくらい慎重な判断が求められ、正当な理由がなければ無効とされます。

しかし、場合によっては就業規則や雇用契約書に「更新上限」や「不更新条項」があることがあります。その場合は雇止めの正当な理由になりうるので、一度自身の契約等を確認してみるとよいでしょう。


まとめ

最近のネットニュースでは、PVを稼ぐために「能力不足でクビ」「若手でも黒字でも解雇される」といった、センセーショナルな見出しや、不安をあおるような見出しを付けることが少なくありません。
そんな見出しを見ると、「自分もいつか突然クビになるんじゃないか」と不安になる人もいるかもしれません。

しかし実際には、日本では社員を解雇するのはとてもハードルが高いのです。
能力が足りないとか、ミスが多いといった理由だけでは解雇はまず認められません。
会社がしっかりと指導したり、仕事を変えたりしても、それでも明らかに業務に支障が出るような場合でないと、解雇は難しいのです。

また、会社の業績が悪いからといってすぐにリストラできるわけでもなく、
「本当に人を減らさないと会社がやばい」
「解雇以外の方法(配置転換や給料カット)を全部やってみた」
「解雇する人の選び方にちゃんと理由がある」
「労働者ときちんと話し合っている」
といった条件をすべて満たしていなければ、整理解雇(リストラ)もできません。

さらに、パートや契約社員などの非正規雇用の人も、何度も更新されていたりした場合は、急に契約を打ち切ることも難しいです。

にもかかわらず、解雇を言い渡された場合、不当解雇として訴え出るべきでしょう。
不当解雇を訴え事で和解金として数百万円受け取ることが出来たケースもあるようです。

ニュースの見出しに振り回されすぎず、正しい知識を持って、冷静に対処していきましょう。


コメント

タイトルとURLをコピーしました