以前の記事で、貯蓄型保険はリスクの潜む金融商品であることをお話ししました。
その中でも外貨建て保険は特に危険性が高く、金融庁も問題視しています。
参考:
リスク性金融商品の販売会社等による 顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果|金融庁
「外貨建て一時払い保険」その組成・販売における課題|金融庁
金融庁が注意喚起を行うのは異例であり、一般的な金融商品ではまずありません。
それだけ、外貨建て保険が「非常にリスクの高い商品」と見なされているということです。
今回は、この外貨建て保険のリスクや問題点について解説していきます。

金融庁まで注意喚起しているなんて、かなりリスクが高い商品と言えそうです。
外貨建て保険とは?
外貨建て保険は、貯蓄型保険の一種で、保険と資産運用の機能を併せ持つ商品です。
米ドル、豪ドル、ユーロなどの外貨で、保険料の支払い・運用・受け取りが行われます。
低金利の日本円建て保険よりも高利回りで運用できるため、以下のようなメリットがあるとされています。
- 保険料を安く抑えられる
- 為替差益が得られる
- 外貨建てによる資産分散効果がある
主な商品には、
- 外貨建て終身保険
- 外貨建て個人年金保険
- 外貨建て養老保険
などがあります。
ここまで聞くと「お得な商品」のように思えるかもしれませんが、実態は非常にリスクの高い投資型の金融商品です。

円だけより安心できると思ったら、安心できないリスク商品なんだね!
恐ろしく高い手数料
外貨建て保険では、数多くの手数料が引かれています。
しかも悪質なのは、その内訳が明示されないことが多く、説明すらされないケースも少なくない点です。
以下は、外貨建て保険にかかる主な手数料の例です。
- 為替手数料(スプレッド)
円と外貨の交換時に発生。保険会社が独自に設定した為替レートにスプレッドが上乗せされるため、高額になる場合があります。
例:片道1.5~2.5円/1ドル程度(往復で約3~5円) - 初期手数料(販売手数料)
契約時に差し引かれる手数料。あなたを勧誘した販売員への報酬(給与)などに充当されます。- 一時払い:4~10%
- 平準払い:初期1~2年分の保険料が全額手数料に充てられることも
- 運用手数料(運用管理費)
保険会社があなたの代わりに資産運用をしてくれることに対してかかる費用です。
年率0.5~1.5% - 保険関係費用
保障部分(死亡保険など)にかかる年間の費用です。
年率1.5~3.0% - 管理手数料(契約・事務管理コスト)
契約の維持、通知書送付、システム運用などの事務にかかるコスト。
年率0.3~0.5%程度(明示されないことが多い) - 解約控除(解約手数料)
早期解約時に差し引かれるペナルティ的コスト。
契約初期には、保険料の5~10%が差し引かれる場合もあります。
これらの手数料はパンフレットに明示されていないこともあり、「予定利率2%」などの表現を信じて安心すると痛い目に遭います。
実際には予定利率からさらに各種手数料が差し引かれ、実質リターンは大幅に低下します。
手数料は複雑で多重構造になっており、見かけの数字と実際のリターンが大きく乖離している点が問題です。

いっぱい手数料がかかるのに、説明されなかったり複雑で分からないことも多いんだね。
途中解約で大きな損失に
外貨建て保険では、初期手数料が高額なうえ、その他の手数料も重なるため、最初の1~2年で支払った保険料のほとんどが手数料に消えてしまうこともあります。
さらに、途中解約には「解約控除」というペナルティがあり、大きく元本割れするケースが多いです。
契約年数にもよりますが、例えば10年契約の外貨建て保険を3年目など初期に解約した場合、支払額の50%以下しか戻らないこともあります。
一度契約してしまうと、元本を取り戻すためには満期まで解約できないのも、外貨建て保険の恐ろしい点です。

多くの場合、元本割れしないためには、満期まで続けるしかなくなっちゃうんです。
為替リスクがある
外貨建て保険は、米ドル・豪ドルなどの外貨で運用されるため、受け取り時に円に換算すると、為替相場の変動によって元本割れする可能性があります。
例:
- 加入時:1ドル=120円
- 満期時:1ドル=100円
→ この場合、円での受け取り額は大きく減ってしまいます。
満期時の為替状況によっては、せっかくの運用益が帳消しになることもあります。
FXトレード(為替取引)で大損する人がいることからも分かる通り、プロのトレーダーですら為替を読むのは至難の業です。

プロでも為替の動きは読みにくいので、外貨建て保険はかなり運任せの面が強いと言えます。
さらに、貯蓄型保険の性質上、途中解約をすれば元本割れをするため儲かっているときに利益確定ができないという制約があります。
利回りは思ったより高くない
商品によっては「利率3%保障」と説明されることもあります。
確かに100万円を積み立てれば、毎年3万円もらえる計算になり、一見すると悪くないように見えます。
しかし、実際には以下のような落とし穴があります。
- 為替リスクによって、円換算で損をする可能性がある
- 各種手数料が差し引かれるため、実際の利回りは 1.5%程度に落ち込むことも多い
つまり、満期時の為替リスクや、途中解約で元本割れする資金拘束リスクを負ってまで、実質1.5%のために契約する必要があるのかは慎重に考えるべきです。
儲かった人もいるが・・・
ここまで外貨建て保険の問題点やリスクを指摘してきましたが、外貨建て保険で大きく儲かった人も、確かに存在します。
主に以下のようなケースです。
- 契約時に**円高(ドル安)**のタイミングで加入
- その後に**円安(ドル高)**へ進み、資産価値が大きく増加
例:
- 契約時:1ドル=96円
- 解約時:1ドル=134円
→ この場合、百万円以上の利益が出ることもあります。
しかしこれは結果論にすぎません。逆に、契約時に1ドル=134円で、満期時に1ドル=96円となれば、同じように百万円以上の損失を被る可能性があります。
パチンコや競馬で儲かった人がいるからといって、自分も儲かる保証はないのです。

ギャンブルほど酷くはないにしても、儲かる保証はありません。
毎月の保険料がきつくなることも
多くの外貨建て保険は、毎月の定額支払いが必要です。
しかし、次のような予期せぬ事態で家計が圧迫されることがあります。
- ボーナスのカットやリストラ
- 病気やケガで働けなくなる
- マイホームの購入
- 子どもの進学や親の介護で出費が増える
こうした状況に陥ると、毎月の保険料が大きな負担となります。
さらに問題なのは、前述のとおり外貨建て保険は途中で解約すると元本割れするケースが多く、支払いが厳しくなっても簡単にはやめられない点です。
特に外貨建ての場合、保険料が外貨ベースで固定されるケースも多く、為替変動によって負担が大きく変わります。
例:
- 毎月500ドルを積み立てる契約
- 1ドル=90円 → 約4万5,000円
- 1ドル=150円 → 約7万5,000円
このように、為替次第で支払い額が大きく増えるのです。プロでも為替を読むのは難しいため、資金的余裕がなければ支払いに行き詰まり、損を覚悟で解約せざるを得ないケースも十分に考えられます。
まとめ:外貨建て保険は“保険”の顔をした投資商品
外貨建て保険は「保険」という名前がついていますが、実態は手数料が高く、柔軟性に欠ける投資商品です。
為替リスク、途中解約による元本割れ、コスト構造の不透明さなど、多くの落とし穴が存在します。
一部では「高利率」「資産分散」といったメリットが強調されますが、実際には手数料が高いため、それほど利回りも高くありません。資産分散を目的とするなら、もっと透明性が高く、リスクを抑えた外国債券や投資信託のほうが合理的です。
金融庁が注意喚起をしていることからも、安易に契約すべき商品ではないことが分かります。
- 長期間にわたり為替の動向を読める
- 支払い増にも余裕で耐えられる
こうした限られた条件を満たす人以外にはおすすめできません。
しかしながら、もし為替を読めるのであれば、わざわざ高コストな保険を選ぶよりも、直接FXなどの為替投資をするほうが合理的です。
また、十分な資産を持つ人であれば、優良株や投資信託など、より透明で高リターンを期待できる手段を選ぶべきでしょう。
「保険=安心」という先入観を捨て、商品内容を冷静に見極めることが、将来後悔しないために重要です。
今後も、危険な金融商品や不要な保険についてわかりやすく紹介していきます。
ぜひ、他の記事にも目を通してみてください。
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