前回の記事では、なぜ結婚式費用が高くなるのかについてお話ししました。
その中で、厳しいブライダル業界の現状や、結婚式費用には“ぼったくり”が多いことなどについても触れました。
今回は、式場選びと見積もりについて、私自身の実体験を交えながらお話ししていこうと思います。
見積もりは必ず複数取る
ゼクシィなどの結婚情報誌やメディアの調査によると、40%〜50%のカップルが、最初に見学した式場でそのまま決めてしまうそうです。
これは非常にもったいないことです。
金銭的な理由ももちろんですが、いろいろな結婚式場を二人でめぐりながら、夢を膨らませて話し合う時間は、人生の中で最も幸せな時間の一つといっても過言ではありません。
ぜひ、複数の式場へ足を運んでみてください。
金額面に話を戻すと、1つの式場しか見学せずに決めてしまうのは、正直かなり危険です。
前回の記事でも少し触れましたが、式場によっては見積もり金額が数十万円から100万円以上も変わることがあります。
実際、私が最初に訪れた式場の見積もり費用は約160万円だったのに対し、別の式場では300万円近い見積もりを提示されました。
最終的な結婚費用も式場によって大きく異なります。
たまたま最初に訪れた式場のプランが高額であったり、不要なオプションを強く勧めてくる式場だった場合、大きく費用が変わってしまいます。
また、複数の見積もりを取らないということは、相場感がつかめないまま準備を進めることになるという点でも危険です。
比較対象があれば、「あれ?ここの式場、〇〇がやけに高いな」などと違和感にも気づけますし、
自分たちが重視するポイントが高額に設定されている式場や、最低限必要な項目すら含まれていない不自然な見積もりにも気づくことができます。
見積もりは“いくらでも操作できる”
これは私自身の体験談です。
3つ目に訪れたのは、地元で比較的新しく人気のある式場でした。高速道路のICからも近く、立地は抜群。人気があるのもうなずけます。
ただ、施設自体は“結婚式専用に設計された商業施設”という印象で、いわゆる「教会らしい雰囲気」とは異なりました。私はチャペル式を希望していたので、外観や内装が実際の教会のように見える式場を探していました。そのため、ここに強い期待はしていませんでしたが、衣装料金や割引サービスなどの条件次第では選択肢に入るかもしれないと思い、見学に行きました。
施設内に案内されると、いわゆる「相談スペース」へ。複数のカップルが同時に話しているようなオープンな空間で、落ち着いて相談できる環境とは言い難く、最初の式場で個室対応だったことを思うと少し違和感を覚えました。
しばらくして支配人が現れ、席につくなり「お話の前に!まず!ご結婚、おめでとうございまーす!!!」と拍手を交えて大声で祝福されました。
人によってはうれしく感じるかもしれませんが、私は正直、やや引いてしまいました。毎日何組ものカップルを見ているプロであるはずの人が、これ見よがしに満面の笑みで拍手をする様子には、少しわざとらしさを感じてしまったのです。
「この度はご結婚おめでとうございます」と、静かに丁寧に言ってもらえるだけで、ぐっと印象が良くなったはずです。
この時点で「自分たちには合わないかも」と思いながらも、先入観で判断するのも良くないので、別の女性スタッフに案内され、施設内を見て回ることに。
まず案内されたのは披露宴会場。新しく清潔感があり広々としていて、特別なこだわりがなければ十分満足できそうな空間でした。花嫁が階段から登場できる演出などもあり、ブライダル施設としての工夫も見られました。
続いてチャペルへ。こちらは2階の一室に設けられた簡易的なスペースで、ステンドグラスや十字架など教会らしい装飾はありません。ただ、正面がガラス張りになっており、晴天時には空が広がり、とても美しい眺めでした。
全体的に、「個人的な好みではない」というだけで、施設自体は十分魅力のあるものでした。
元の相談スペースに戻ると、再び支配人が登場し、感想を尋ねてきました。私は率直に「少し好みとは違ったかもしれませんが、見積もり次第ですね」と答えました。
すると支配人は「そうですか。案内したスタッフからも少し迷っているようだと聞きました。お客様は価格重視でしょうか?」と聞いてきました。
このとき、私は「すべて盛り込んだ見積もりがほしい」と伝えるべきだったのですが、当時は見積もりのカラクリをあまり理解しておらず、「そうですね」とだけ答えてしまいました。
支配人は「分かりました!」とその場を離れ、私たちは試食をいただくことに。しばらくして支配人が戻ってきて、提示された見積もりはなんと約100万円。全国平均が350万円前後という中で、これは驚きの安さです。
支配人は「どうですか?」と、即決を促すような圧をかけてきましたが、私は「他にも検討している式場があるので、一度持ち帰って検討させてください」と冷静に対応しました。
価格には心が揺れましたが、妻があまり気に入っていなかったこともあり、一旦保留としました。
後日、他の式場の見積もりと比較して驚いたのは、この“安い見積もり”の内容です。
- ドレスの価格は20万円と記載されていたが、欄外には「20万・30万・40万」の選択肢があり、一番安い金額で計算されていた
- 食事プランも最低ランクの内容
- 贈答用花束や司会・演出など、通常含まれるべき項目が見積もりに含まれていない
- 「ドレス2着目無料」など一見お得なサービスも、“〇〇保険に加入した場合”という条件付き
- 参列者が30人を超えると、施設使用料が6倍になる仕組みが組み込まれていた(5万円が30万円になるように小さく書かれていた。)
私たちは当初30人程度を予定していましたが、実際の結婚式では人数が増えるのはよくあることです。にもかかわらず、30人を超えた瞬間に費用が大きく跳ね上がるよう設計されていたのです。これは、式場側が最初から“30人以上になる”ことを見越して見積もりを安く見せるためにこういうカラクリを設定していたとしか考えられません。
結婚式の見積もりというのは、見せ方次第でどうとでも操作できるのです。
4つ目に訪れた式場では、見積もり時点で300万円近かったですが、担当のプランナーが誠実で印象的でした。

「見積もりは、安く見せようと思えばいくらでもできます。うちは最初から必要な項目をほとんど入れています。上がるとしてもせいぜい2〜30万円です。」
私が3つ目の式場の話をすると、

「それは…かなり悪質ですね。この内容では、とても式は挙げられませんよ。必須項目の多くが抜けています。」
と教えてくれました。
このように、見積もりは“安く見せる”ことが可能であり、提示された金額だけを見て判断してしまうと大きな失敗につながります。
後から追加になるオプション
結婚式の見積もりは、最低限の項目だけで構成された「ベース価格」として提示されることがほとんどです。
しかし実際には、多くのカップルが見積もりに含まれていなかった項目を後から追加することになります。
しかも、その追加費用は数十万円単位で膨れ上がることが珍しくありません。
以下は、見積もりの段階ではほとんど載っておらず、後から加わることが多い代表的な費用をまとめてみました。
【衣装関連費用】
- ドレス:40万円
- タキシード:30万円
- 2着目ドレス(カラードレスなど):40万円
- 衣装小物(ベール・アクセサリー・靴など):約5万円
【美容関連費用】
- お色直し時のヘアチェンジ:1~2万円
- リハーサルメイク(事前打ち合わせ):1~3万円
- 新郎のヘアセット&メイク:約1万円
【写真・映像関連費用】
- スナップ撮影(挙式〜披露宴までの写真):10~20万円
- アルバム制作:5万〜20万円
【装花・装飾関連費用】
- 装花のグレードアップ(ゲスト席・新郎新婦席など):5万〜15万円
- ブーケのオーダーメイド:2万〜5万円(2着分用意する場合は倍)
- ウェルカムスペースの装飾:1万〜5万円
【演出・映像関連費用】
- エンドロールムービー(当日の映像をその場で編集・上映):15万〜25万円
- オープニングムービー・サンクスムービー(セット):数万円
- 新郎新婦紹介ムービー:10万〜20万円
【特殊演出関連費用】
- キャンドルサービス
- ドライアイス演出
- 再入場演出(花火・噴水など)
式場めぐりは見積もり比較以外にも多くのメリットがある
ここまでは主に見積もりに関する話が中心でしたが、式場見学をすべき理由は他にもたくさんあります。
【式場の雰囲気が分かる】
式場の雰囲気はウェブサイトなどでもある程度分かりますが、実際に足を運ぶことで、その式場の特徴や造りを細かく確認できます。
たとえば、手入れされた芝生が広がる開放的なガーデンがある式場では、ガーデン挙式ができたり、デザートビュッフェやコーヒースタンド、引出物マルシェなど、屋外ならではのカジュアルな演出も可能です。
披露宴会場に階段がある式場では、新婦が音楽に合わせて階段から入場するような華やかな演出ができることも。
本格的な教会を備えた式場では、厳かなパイプオルガンの演奏に包まれた挙式が可能です。
このように、式場ごとの個性や演出の幅を実際に体験できることで、自分たちの理想の式をより具体的にイメージできます。
また、プランナーが式の流れやオプションを丁寧に説明してくれるため、自分たちに最も合ったスタイルを見つけやすくなるでしょう。
【スタッフの質が分かる】
結婚式場のスタッフは一般的に高い接客スキルを持っていますが、中には信頼に足るとは言い難い対応をする式場も存在します。
たとえば、現実的でない見積もり(極端に安く見せたもの)を提示するなど、誠実さに欠ける対応は要注意です。
スタッフの質を見極めるのは難しいですが、見学時の案内が雑だったり、営業色の強いわざとらしい対応が多い式場は避けたほうが無難でしょう。
なぜなら、世界的なホテルブランドであるリッツ・カールトンの「ゴールドスタンダード」や、日本の一流ホテル(ホテルオークラ、帝国ホテルなど)では、「控えめで上品な思いやり」や「落ち着いた真心のこもった接客」がもっとも大切にされているからです。
そうした本質的なおもてなしには、過度な営業スマイルやわざとらしさは不要であり、落ち着いた品のある笑顔や自然な気配りこそが信頼されるスタッフの条件だと言えるでしょう。
段取りの悪さ、対応や案内の雑さ、書類や説明の誠実さ、スタッフの態度等を総合的に判断しスタッフの質を判断するようにしましょう。
【試食が幸せ】
多くの式場では、見学時に料理の試食を提供しています。
結婚式で提供する料理は、ゲストにとっての大きな楽しみのひとつ。自分たちとしても、おいしい料理を提供したいと思うのは当然です。
私が見学した式場の一つでは、非常に料理に力を入れており、試食でいただいたオマール海老が本当に素晴らしかったのを覚えています。非常に高額な式場だったため、最終的には見送りましたが、最後まで候補に残る魅力ある場所でした。
式場をいくつも見学すれば、それだけ試食を楽しむ機会も増えます。毎週末のデートとして式場を訪れるのも、非常に満足感の高い過ごし方になるでしょう。
行けるだけ多くの式場を回れば、それだけおいしい料理を楽しめると考えれば、行かない理由はありません。
もちろん、結婚式を挙げる予定がないにもかかわらず嘘をついて見学することは、倫理的にも法的にも許される行為ではありません。
ただし、本当に結婚式を検討しているのであれば、式場側にとっても「自分の式場で挙式をしてもらえるかもしれない」チャンスです。むしろ積極的に見学に来てもらいたいと思っているはずですので、遠慮せずにどんどん参加すべきです。
このように、結婚式場を多数見学することには、
- 見積もりを比較できる
- 式場の雰囲気が分かる
- スタッフの対応を確認できる
- おいしい料理が楽しめる
といった多くのメリットがあります。
1つの式場だけで決めてしまうのは本当にもったいないことです。場合によっては、数百万円の損をしてしまったり、自分たちの理想とはかけ離れた式になってしまう可能性さえあります。
冗談のような話ですが、見学をあまりせずに質の低い式場を選んでしまった結果、新婦入場の音楽がなぜか「謎の太鼓のBGM」になるミスが起きてしまったという話を聞いたこともあります。
しかも、そうした式場に限ってGoogleマップの評価がやたらと高く、不自然なアカウントによる大量の星5レビューで印象操作されているケースもあります。インターネット上の評価だけに頼るのは非常に危険です。
ぜひ、パートナーと一緒に多くの式場を見て回り、たくさん未来のことを話し合って、人生に一度きりの最も幸せな時間をできるだけ長く、豊かに過ごしてください。
次回の記事では、結婚式費用を抑えるための実践的なテクニックをご紹介しようと思っています。
ぜひ次回も読んでみてください。
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